作家の池澤夏樹氏作、演出・主演を狂言方和泉流野村萬斎氏がつとめる新作狂言「鮎」が12月22日(金)、23日(土・祝)国立能楽堂で初演される。同作は、池澤氏が海外の民話をもとにして描いた短編小説「鮎」を狂言として上演するもので、国立能楽堂が狂言を委嘱初演するのは10年ぶりとなる。
会見に先立ち、9月に国立能楽堂研修能舞台で記者会見が行われた。会見では萬斎氏が「どの程度新作にしてどの程度狂言にするかが難しい。今後、古典になっていってほしいという世界観で、狂言の可能性を示せるような作品にしたい」と意欲を述べ、池澤氏は若い頃、六世万蔵氏の大ファンであったと告白した上で「狂言の魅力はわかりやすさ。考えるのではなく感じるまで笑える演劇」であるとして「若い人にもっと来てほしい」と話した。本作では古典狂言にはあまりみられない長い時間経過が描かれるほか、鮎を登場させるなど「チャレンジング」(萬斎)な演出もあるとしながら、楽しく深く狂言らしい作品を目指すという。
公演は両日とも【昼の部】13時始/小舞「鮒」野村萬斎、狂言「魚説法」野村万作、野村太一郎、一管「神舞・水波之伝」藤田六郎兵衛、新作狂言「鮎」小吉・野村萬斎、才助・石田幸雄、大鮎・深田博治、小鮎・月崎晴夫、高野和憲、内藤連、中村修一、飯田豪、笛・藤田六郎兵衛、小鼓・大倉源次郎ほか。【夜の部】18時半始/小舞「鵜飼」野村萬斎、狂言「宗八」野村万作、岡聡史、竹山悠樹、一調一管「瀧流延年之舞」藤田六郎兵衛、大倉源次郎、新作狂言「鮎」(演者は昼の部と同じ)ほか。
チケット申込み=国立劇場チケットセンター☎0570─07─9900ほか、チケットぴあ、イープラスでも取り扱い(予約開始は11月9日)。
問合せ=国立能楽堂☎03─3423─1331へ。
【ものがたり】
清流手取川のほとりに住む才助は、人の顔を見るとその者の人柄や将来を見通せる不思議な力を持っている。ある日、鮎釣をしていた彼の前に山向こうから逃げてきたひとりの男・小吉が現れる。立身出世を願う小吉は才助が止めるが聞き入れず、才助の紹介で町の宿屋に奉公することになる。下足番からついには宿屋の亭主にまで上り詰めた小吉。才助はある頼みごとを胸に久しぶりに小吉を訪ねるが……。