シテ方観世流の梅若玄祥氏が来年三月を以て「梅若実」の名跡を襲名する。初世梅若実(1828〜1909)は、明治維新によって衰退した能の再興に貢献した人物で、十六世宝生九郎、櫻間左陣(前名・伴馬)とともに〈明治の三名人〉と謳われた。梅若玄祥氏の曾祖父にあたる。今回、梅若玄祥氏が継ぐのは四世で、三世実は五十五世梅若六郎に追贈される。
▼梅若玄祥氏略歴:シテ方観世流、梅若六郎家五六世。昭和23年東京生。五五世梅若六郎の次男。二世梅若実および父に師事。昭和26年「鞍馬天狗」子方で初舞台。29年「猩々」で初シテ。古典の能を極める一方で、現行曲演出の再検討、番外曲の復曲、新作能の上演なども積極的に推進している。昭和61年度芸術選奨文部大臣新人賞、平成10年度日本芸術院賞ほか受賞多数。19年日本芸術院会員に就任、26年重要無形文化財各個指定(人間国宝)。梅若会、至高の華を主宰。(公財)梅若会理事長、梅若能楽学院院長。著書に『まことの花』(世界文化社)など。
『能楽タイムズ』2017.6月号より