文化庁は平成30年12月27日、優れた芸術活動を表彰する『文化庁芸術祭賞』の平成30年度(第73回)受賞者を発表し、能楽界から演劇部門優秀賞に狂言方和泉流の野村萬斎氏が〈狂言ござる乃座58th における「悪太郎」の成果〉で、また、大鼓方大倉流の山本哲也氏〈第24回照の会「山姥」における成果〉でそれぞれ選ばれた。受賞理由および略歴はそれぞれ左記の通り。
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野村萬斎氏受賞理由:「悪太郎」はシテの性格が強烈なため演者を選ぶ大作である。豪放磊落なキャラクターに同化して演じられることが多いこの難役を野村萬斎は明晰な知性で捉え直し、「思索するアウトサイダー」として再生させた。淡々と情味深い石田幸雄の伯父。絶妙の呼吸で至芸を見せる野村万作の僧。この両名手の助演を得て当代一のアンサンブルが成立。重演を常としながら時々の一回性に賭ける古典芸能・狂言の神髄を見事に示した。
山本哲也氏受賞理由:山廻りを続ける山姥の正体に迫る難解な曲だが、シテ方や小鼓などと調和よく間を刻み拍子をとるだけでなく気迫がこもる演奏で作品の世界を創造した。特に後半、大鼓特有のカーンという高く澄んだ音が響き渡ると険しい山々を連想させ、強弱のある音色やメリハリのついた掛ケ声で鬼女の恐ろしさだけではない優しさをも感じさせた。
またこのほか、テレビ・ドキュメンタリー部門の優秀賞に、株式会社WOWOW製作の『ノンフィクション・野村家三代パリに舞う~万作・萬斎・裕基、未来へ』が選ばれている。